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■第3話 猿鬼伝説(三井地区仁行)
お話を始める前に・・・・・
第三話にゆかりの場所をご紹介します。
 輪島から穴水への県道1号線を本江で左折して、37号線に入り能登町方向へ進むと左手に大幡神社(正式名称は大幡神杉伊豆牟比盗_社)が見えてくる。写真1、2がそれである。猿鬼を退治した神杉姫ゆかりの神社である。

さらに県道26号線に合流して、しばらく行くと「当目」という珍しい名称の集落に入り、左手に岩井戸神社が見えてくる。ここは、猿鬼が閉じこもっていたところで、写真3の鳥居をくぐると、写真4の碑が建てられていて、さらに参道を行くと川ぞいに出て、写真5の本殿に至る。

 猿鬼伝説は、地域に大きな影響を与えた伝説で、輪島市三井から旧柳田にかけての広い範囲で猿鬼伝説ゆかりの興味深い地名が散在する。能登半島でもっとも有名な伝説のひとつと言えよう。

 以下にその話を紹介するが、かなり長い話なので一部を略して述べる。(*出典;「輪島の民話、p.69〜70」)

↓<写真1>大幡神社の鳥居と石柱
<写真1>大幡神社の鳥居と石柱
↓<写真2>大幡神社の境内
<写真2>大幡神社の境内
↓<写真3>岩井戸神社の看板と鳥居
<写真3>岩井戸神社の看板と鳥居
↓<写真4>猿鬼伝説の碑
<写真4>猿鬼伝説の碑
↓<写真5>岩井戸神社の本堂(赤い橋を渡って向こう側が正面)
<写真5>岩井戸神社の本堂(赤い橋を渡って向こう側が正面)
■猿鬼伝説

 仁行(にぎょう)の猿尾谷(さるおだに)に、猿鬼と呼ばれる怪物がすんでいた。もともとは、西山の釜ケ谷にすんでいたのだが、この地にやってきて、十八匹の家来とともに古屋谷にある高さ三十丈の大杉にのぼってあたりをにらんでいた。そうして、村人の作物を盗んだり、娘をかどわかしたりして暴れ回っていた。(中略)

 猿鬼の悪行を憂えられたのは、三井大幡の神杉姫(かんすぎひめ)の神。そこで、出雲の大社で八百万(やおよろず)の神々に訴えて猿鬼退治の軍をつくってもらったがやと。

 大将は、能登一ノ宮の気多大明神。副将は、神杉姫。それに、能登のあちこちの神々があとに続いた。

 猿鬼たちは、当目(とうめ)の岩屋堂(いわやど)に閉じこもっていた。そこで、神杉姫が十二単衣を着て「お猿、お猿」と呼んだ。すると、「おう、きれいな娘やな」と、猿鬼どもが出てきたので、神様たちは急いで数千の矢を射った。ところが、猿鬼どもは、その矢を一本残らずつかみとっては神々の方へ投げ返したと。

 仕方なく神々はひとまず稲舟(いなふね)の海岸まで退いた。さて、どうしたものかと、神杉姫が悩んでいると波の間から不思議な歌声が聞こえてきた。

 「千反の 布に身を巻き 筒の矢を 射させたまえや 神杉の姫」(中略)

 不思議な歌に教えられた神杉姫は、神々と岩屋堂の前に戻ると、千反の白布をからだに巻いて、舞を踊ったのだと。

 「なにごとや」と出てきた猿鬼どもに目がけて、神々は筒矢を射かけた。「なんや、こんなもん」猿鬼の大将が筒矢をつかんだ。すると、筒の中の矢が飛び出し、猿鬼の目に当たった。おどろいて逃げ出すところを、神杉姫が切り倒した。家来の猿鬼どもも、残らず討ち取った。(中略)

 猿鬼の亡がらは、大箱(おおばこ)村の川のわきに埋められたが、いろいろとたたりが続いた。そこで、神杉姫が僧の姿になって、十七日間、お経をあげたら、猿鬼は仏となったと。

■猿鬼伝説にまつわるいくつかの地名

 能登でよく知られた地名との関連をいくつか例示すると、猿鬼の目に矢が当たったところが「当目」、黒い血が川になって流れたところが「黒川」、血が五十里も流れたというので「五十里(いかり)」、猿鬼がオオバコで手当てをしたのが「大箱」、神々が馬を寄せたところが「駒寄」、神々の休んだところが「神和住(かみわずみ)」、とそれぞれの地名のいわれを言うのだが、うまくできているものだと感心させられる。

(第3話おわり)